※今回かなり長文です。
人の死なないミステリー。
最初に断っておくと、このゲームはいわゆる”殺人事件が起こって犯人を捜し出す”という
推理小説的な「ミステリー」ではありません。ミステリーという言葉の根本的な意味、
(1)神秘的なこと。不可思議。なぞ。三省堂提供「大辞林 第二版」より
の方の「ミステリー」を題材にしたゲームです。(という事は、レイトンもある意味ミステリー…)
ですので、パッケージの「DSで、ミステリー」というコピーとCMの発砲シーンを見て、
「このゲームは殺人事件が起こるゲームなのだな…」と思った方は要注意。
肩透かしを食らう可能性があります。(あのCMはある意味JARO…)
そう、このゲームはコピーの2行目にある、
『願いが叶う部屋があるという「ホテル・ダスク」での奇妙な一夜』を過ごすゲームなのです。
ゲームは淡々と進みます。
ええ、それはもう淡々と進みます。
でも、面白くないわけじゃないです。実は盛り上がり方がなだらかなんですよね。
そんな淡々と進む中、この先に何かが起こりそうだと予感させる不思議などきどき感。
それを感じさせてくれる仕掛けが、実に巧いんですよ、このゲーム。
主人公の最終目的は、消えた友人の行方を探し出しその訳を聞く事。
でもそれ一辺倒ではなく、宿泊客や従業員とのやり取りの中、ちょっとしたきっかけで
それぞれの秘密を知っていくと、無関係に見えた者同士が実は複雑に絡み合ってて、
徐々に主人公が追い求めるものに近づいて行く…。という遠回りな展開が良いんですよ。
しかも、分かってくる物事の順が時系列じゃない所がミソ。
3年前→7年前→半年前→10年前、みたいに1つ1つがバラバラです。
その断片を少しずつ組み立てていく感じ、ジグゾーパズル感覚というか、
5本くらいの絡まった糸を必死に解きほぐしてみたら、実は1本だった!!
という驚きを味わえる、伏線と集結のシナリオ構成は見事の一言。
実はシナリオ担当が、ミステリー系ADVの第一人者、鈴木理香氏なのです。納得。
(鈴木理香氏はJ.B.ハロルドシリーズや「琥珀色の遺言」等も担当。先日DSで出ましたね)
前回の「アナザーコード」では謎解きがメインでしたが、
今回はスパイス程度に抑え、登場人物達の会話に力を入れている感じです。
話の途中で任意に切り返せる、「ツッコミボタン」が表示されるのが斬新。
選択肢は、間違えると即ゲームオーバーになるスリリングなものもありますが、
大人の常識や相手への思いやりさえ考えていけば、おのずと正しい選択肢が分かるので
理不尽は感じませんでした。(わざと間違ってゲームオーバーリアクション見るのも一興)
そしてペンを使った謎解きは、前作と違い本筋にあった現実的なものになっています。
しっかり観察し考えればさほど捻ったものは無く、バランスの程よい難易度かと。
結末は、謎がいくつか残ったまま少し曖昧な終わり方なので、賛否両論ありそうですが、
私はこの終わり方の方がこの話に合っていて良いと思います。こういう終わり方は好き。
カイルやミラにも、ルイスや他の達にも「これから」を感じさせるラストだし。
今回1番可哀想な人には、真のエンディングで救いがあるし。
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そんな渋いストーリーを彩る世界観も素晴らしいですね。
セピア色を基調とした水彩画のような背景。
そんな中、鉛筆でモノトーンに描かれたリアルコミック系の人物が活き活きと動きます。
動きはパラパラアニメ調でコマ数も少ないのに、1つ1つの細かい仕草が実に人間くさくて、
まるで血の通っている人間に見えてきます。そのキャラクター自体も魅力満載。
主人公はちょっとぶっきらぼうで横暴だけど、実は結構お茶目なオッサンだし。
キャラについて語り出し止らなくなりそうなので、そこらはぜひ皆様で確認して下さい。
個人的には、ルイスが好きで好きで。自分、半分ルイス目当てでプレイしてました。
あのふにゃっとした笑顔が! あのふわふわの髪に手を突っ込みたい!!
シックな音楽も素晴らしく、世界感にさらに彩りを加えてると思います。
特に「秘密」という(公式サイトのムービーで1番最初に流れる)曲が切なくて好き。
あまりに好きすぎて、発売から1年間ずっと携帯の着メロにしてるくらい。
サウンドテストの出来るセーブデータは永久保存版です。
この会社は、世界観や空気感を作るのがホント上手いですね。
美麗な映像美が追求される昨今、あえてアナログ的な雰囲気が逆に魅力的です。
そんな世界観なので、クリア後は1本の昔のロード・ムービーを見たような気さえします。
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ずっと絶賛してますが、ツッコミ所も無いわけではないです。
ちょっと移動が遅いとか。ドアや電話が一手間多くて少し煩わしいとか。
リアルなんですが、頻繁にあるので後半少し面倒になってきます。
せめて、自室以外でも必ず開く扉はするっと通れたらサクサク感が増したかも。
タッチパネルを使った謎解きが、判定がシビアなものがいくつかありました。
特に「配電室の謎解き」だけはもう2度とやりたくないよ。(涙)
それと、登場人物が何らかの形で全員因縁があるのにツッコミたい人は多そう。
それをありえないと取るか、奇跡の巡りあわせと取るかで評価が割れそうです。
あ、3D酔いする方は左パネルを凝視しないように注意してください。酔いますよー。
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長々と色々書きましたが、個人的には大満足です。
序盤はストーリー展開も少なく、作業感がありますが中盤からじわじわ面白くなっていくし、
自由度も少なく、何度も遊ぶゲームではありませんが、1度で充分満足いくゲームですね。
気に入ったら、2周目は内容をかみしめる為にじっくり遊んでみてください。
小ネタ程度ではありますが、ちょっとした変化もあります。
ちゃんと利き手選択ができるし、気になる事は直に書いておける『メモ』機能が便利だし、
DSを本体を文庫本のように縦に持たせる事で生まれる小説的な感覚と、
また、会話の時には左右の画面に人物を配置する事でより会話している感じを表したり、
移動時は平面マップと同時に3Dの風景を表示するなど、2画面の使い方が上手くて、
スタッフのゲーム作りや作品に対する真摯な丁寧さ、心配りを感じました。
対象は全年齢だけど、ゲーム中の登場人物や部屋名などが英語で表示されるので、
どちらかと言うと大人向けですね。内容的にも大人の方が楽しめると思います。
謎解き重視派より、雰囲気やキャラクターにどっぷりはまるタイプにオススメ。
ボリュームはゆっくり遊んで20時間程度でちょうどいいので、
忙しい大人の方でも寝る前に1日1章とか遊ぶのもいいかと思います。
合わない人には合わないゲームだと思いますが、
1度公式サイトのムービーを見てみて、ビビっときたらきっと合います。
実は自分もそのムービーを見て、映像と音楽に一目惚れして買った1人だったりします。
続編というか、次回作も是非ともプレイしたいと思います。
それにしても、前作と合わせてサントラ出してくれないかな。すごい欲しい。 (09/02/24改定)
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